Research Studio
UCSD海外研修 “Entrepreneur Training Program”開催報告(2023年2月6日~10日)
2023年2月6日~10日の5日間、Research Studio 2022 B-GEAR国内プログラム、ファイナルピッチにおける受賞チームより下記3チームが、海外展開を含めたグローバルな視点でのシーズの展開をさらに具体化するべく、米国サンディエゴのUCSD IGEの海外アントレプレナートレーニングへ参加した。昨年度、一昨年度はコロナ禍のためオンライン開催だったが、今年度は3年ぶり現地での開催となった。
1)大槻 雄士氏 株式会社 FerroptoCure 「フェロトーシス誘導性抗がん剤の開発」
2)細田 莞爾氏 PRD Therapeutics 株式会社 「脂質代謝性疾患に対する新規治療薬の開発」
3)畔堂 一樹氏 milldy 産総研・大阪大学 「患者・医師の負担を減らす術中迅速がん診断装置」
プレメンタリング
現地での研修前、参加するチームの特性に合わせてUCSDが選定した3名の現地担当メンターと2022年12月から2023年1月にかけてプレメンタリングを複数回実施した。UCSD研修プログラムで達成したいこと(OKR; Objectives and Key Results)についてメンターと綿密な調整が行われた。
PRD TherapeuticsチームにはIGE/Research Studioの Biomedical Commercializationでリードインストラクターを務めるJohn York氏、FerroptoCureチームには、起業家精神に溢れた優秀な医師でもあり、学術界、公的機関、民間企業において経営管理の経験を持つ Dominic Tong 氏、milldyチームには、UCSD、他大学、機構のアドバイザー、メンター、また複数の新興企業のアドバイザリーボードも務めているMatthew Hedayat氏がそれぞれメインメンターを担当した。
Entrepreneur Training Program 現地スケジュール
プログラム内容
プログラムの1~2日目Classroom lectureでは、まず各チームからプレゼンテーションを行った後、「Story Telling」「Interviewing」「Marketing Sizing and competition」「Business model canvas」等の講義やワークショップが行われた。
また、UCSD外部の法律事務所から招聘されたスピーカーによる知財に関する講義と、起業家による各チームのピッチプレゼンテーションの聴講もあった。3日目には、二人の投資家を招き、スタートアップ企業が成功するうえで大切な要素や起業家に求められることを題材にパネルディスカッションが行われた。参加チームメンバーは米国の投資家の生の声を聴くとともに、投資家に対して直接質問したり、対話する良い機会となった。米国のエコシステムを熟知したメンターからの実践的なレクチャーは、米国でのビジネス展開へ向けてそれぞれのプロジェクトを加速させる内容となっていた。
2~4日目のField Workでは、各チームの要望や各メンターの推薦等により選ばれた面談相手とのInterviewの機会が設定された。面談相手はそれぞれの領域において高い専門性を有する医師やキーオピニオンリーダー(KOL)、大手製薬企業に所属する研究者やBD関係者、バイオベンチャー企業の経営者、投資家、米国での開発、製造、販売のパートナーとなる臨床試験施設関係者、米国の規制(特に知財関係)に詳しいコンサルタント、製造受託企業関係者など、多彩であった。各チームはUCSDの講師陣およびメンターの持つネットワークを活用し、事業活動において有益な情報を入手するとともに、米国展開に向けた独自のネットワーク形成の機会を得ることができた。
5日目の最終日には、投資家のゲストをむかえて、4日間の研修の成果を踏まえたFinalピッチセッションが行われた。各プレゼンテーションの内容には研修で得られた知見が十分に反映されるとともに、発表者の話術においても研修期間中に行った複数回の英語による発表の成果が認められた。各発表に対して、参加しているメンターあるいは投資家から今後の活動に対するアドバイスやエール等のフィードバックがあった。
帰国後も、各チームはそれぞれの担当メンターと事業展開や資金調達に関する相談を行い、今後も各チームとメンターとのコミュニケーションが継続すると考えている。
参加者の感想
株式会社 FerroptoCure 大槻 雄士氏
・非常に良い経験でした。
・チームとして、海外進出までのロードマップを具体的に作れ、かつその方法まで見えました。
PRD Therapeutics 株式会社 細田 莞爾氏
・英語pitchの機会がたくさんあり英語苦手意識が少しは薄れた。アセットはUSでは非常に高評価だったので海外展開を前向きに考えるようになった。
・シリーズA後にUSで資金調達も視野にいれるようになった。サイエンティフィックアドバイザーやサポーターを見つけることができた。
・他のアクセラレーションプログラムでは会うことができないような、本当に会社にとって役に立つインタビュー相手 (KOLや同じ領域の開発経験を持つベテランビジネスパーソン) にインタビューすることができた。
milldy 産総研・大阪大学畔堂 一樹氏
・現地のインタビューで直接の意見を伺えたこと、参加者同士の横のつながりが強固になったこと。リアルなピッチのトレーニング。
・米国市場においてもニーズが日本同様にあるということについて確信が持てた。海外進出を具体的に検討していくというモチベーションにつながった。
UCSDプログラム全日程を終えて
3年ぶりに現地での開催となった本プログラムも、コロナ禍の中での準備となったが、無事に開催できたことをまず安堵している。今回、大阪大学の他、初参加となる千葉大学、慶応大学の先生方の参加もあり、Faculty Developmentも行えたことも感謝申し上げたい。筑波大学の有する知見やネットワークを本邦のベンチャーエコシステムの発展のために今後もプログラムを進化させていきたい。