医療アントレプレナー育成プログラム「Research Studio 2019 powered by SPARK」 開催報告
概要
筑波大学T-CReDO主催、慶応義塾大学病院臨床研究推進センター共催で2018年に始動した国内初の医療製品開発特化型アクセラレーションプログラム”Research Studio powered by SPARK” は、2019年度より全国の他大学連携拠点(大阪大学、京都大学、岡山大学及び九州大学)へプログラムを拡大して開催致しました。本年度も海外連携拠点であるStanford大学SPARKプログラム、UCSD Institute for Global Entrepreneur(UCSD IGE)の協力の下、国内のみならず国際的視点を踏まえたカリキュラムで計10回のメンタリング・グループワークを行い、各々のプロジェクトをブラッシュアップしました。講師やメンター陣には、臨床開発からビジネスモデルまでの様々な分野から経験豊かな人材を登用し、 SPARKプログラム、UCSD IGEからも講師・メンターを招聘し、米国市場参入を現実的に考えた際に必要とされる実践的指導を仰ぐ貴重な機会を設けることで、受講生は多くの気づきや参考となる意見を得ることができるプログラム構成となっております。
本プログラムはAMED「橋渡し研究戦略的推進プログラム 拠点間ネットワーク 人材育成事業」の支援を受け実施致しました。
スケジュール
応募書類・ビデオ動画によって選抜された計4チームが、Boot Camp及び隔週10回のメンタリングを通して、シーズの実用化に向けたプランを練り上げ、英語によるピッチを完成させるカリキュラムを受講しました。
受講生の選考
- 国内の大学院生・アカデミア研究者・アカデミアと共同研究を実施する企業研究者・教員等で医療シーズを持ち開発意欲のある方(知財出願済もしくは出願間際であり、起業を検討中)
- ビジネス経験を持ち、1の研究者のシーズをもとに起業することも検討可能な方
- 起業に興味があり、アカデミアに所属している医療または臨床開発の経験があり助言が可能な方
を対象に募集を実施し、多くの方に応募頂きました。内部選考を経て、計4チーム 17数名の受講生が今回の参加となりました。(選考から漏れた方の内希望者は‘インターン’として、Boot Campのみ参加しました。)
Boot Camp
6月11~13日の3日間、筑波大学健康医科学イノベーション棟8階講堂にて濃密な講義を受講しました。
知財、Target Product Profile、医薬品・医療機器及び再生医療等製品の開発・事業戦略に関する内容から、スタートアップの設立と運営、資金戦略やVenture Capitalからの資金調達に関するビジネスモデル構築・戦略に関する内容まで、網羅的な講義を学習して頂きました。4チームのプロジェクトも御発表頂き、活発な意見交換が交わされました。オブザーバー参加の受講生にもポスター発表で盛り上げて頂きました。
講師陣も、現場の経験に基づいた実用的助言を中心に、熱気に溢れたメッセージとともに受講生へエールを届けて頂きました! BootCamp講義の一部は、大学病院臨床試験アライアンス「CREDITS」で配信予定です。
隔週水曜日のメンタリング・グループワーク
参加した4チームにそれぞれチューターとしてT-CReDO所属の臨床医が1人ずつ担当となり、プログラムの進行のサポートをしました。計10回のメンタリング・グループワークのうち、前半5回は研究成果と対象とするアンメットメディカルニーズを詳細に検討し、最終製品の姿をTarget Product Profileとして策定しました。後半5回は開発戦略と国際展開を視野に入れたビジネスモデルに関するグループワークを行いました。
各回、ショートレクチャーによる講義とチーム毎のピッチ発表を継続しながら、テーマ毎にグループワークを繰り返しました。つくばメイン会場&慶応大学サテライト会場にて、TV会議システムを用いる講師陣からのメンタリングを経て、様々な角度からの分析を行い、時にはPivot・方針転換もしながら議論が継続されました。
中間ピッチ発表&公開セミナー「医学研究の出口戦略と起業」
中間ピッチでは、各チームにTarget Product Profileを中心に、英語で10分間の発表(10分間の質疑応答)を行いました。各チームが前半5回の様々な議論の上練り上げていった成果を熱意をもって発表し、メンターとも活発な質疑応答がなされました。
また、公開セミナーでは、全世界にネットワークを持つSPARK Globalよりスタンフォード、シドニー、台湾のDirectorの先生方を招聘し、各地域での研究成果実⽤化の取り組みについて紹介いただきました。更に国内での医療機器開発の第⼀線でご活躍されているJOMDDの内田先生に、スタートアップにおける医療機器開発の実際についてご講演いただきました。
最終ピッチ発表
後半のグループワーク・メンタリングでは、ビジネスモデル・ビジネスプラン構築を中心に議論を深めました。アカデミアだけでは策定困難な開発戦略と国際展開を視野に入れたビジネスモデルのトレーニングも、各分野の第一線で活躍されている外部メンターの協力の下無事に運営できました。(事務局も貴重な勉強の機会でした。)各回ごとに各チームがほかのチームの成長に相互に刺激を受けながら力をつけていき、プランを洗練していくことができました。
最終ピッチでは、前半のグループワークで作成したTarget Product Profileに加えて、開発戦略と国際展開を視野に入れたビジネスモデルに関する内容が追加されました。ピッチテクニックも向上し、聴衆に訴えかける個性豊かなストーリー性のある発表がなされました。
これまでの約半年間のプログラムを経て、中間ピッチ以上に、英語での10分間の発表・10分間の質疑応答も著しい進歩のみられるチームもあり、受講生のプロジェクトへかける思いが十分に伝わってくる状況でした。各チームの差は僅差であり、選考委員会では、現時点での完成度を優先すべきか、UCSDプログラムでの効果が得られるチームを重要視すべきか、など各メンターで意見の相違もあり、UCSDプログラム受講チームを選考することの難しさを再認識する結果となりました。
審査委員会による選考の結果、本年度の最優秀チーム(Grand Prize)及びGlobal Entrepreneurship Awardは、以下のチームが受賞致しました。
その他の2チームも、長丁場のプログラムでしたが1つ1つ吸収しながら成長していき、様々な視点からのメンターの意見を踏まえて、各々のプロジェクトを推進する機会を設けることができました!
長丁場のハードなプログラムを修了した功績に対して、以下の賞を授与させて頂きました。
最優秀賞 及び Global Entrepreneurship賞の2チームが、翌2020年2月に開催されるUCSDの海外アントレプレナートレーニングに参加して頂くこととなりました。受講生の皆様、まずは、6か月間の長丁場本当にお疲れ様でした。
国際シンポジウム ‘International Symposium on Entrepreneur-Fostering Programs and Ecosystem’
最終ピッチの翌日にResearch Studioの締めくくりとして、慶応義塾大学三田キャンパスにて国際シンポジウムを開催致しました。
その内容は充実したものであり、SPARKにおけるトランスレーショナルリサーチについて、Stanford大学の池野文昭先生に「Scientists without borders, SPARK」、SPARK FinlandのPasi氏に「Education contents of SPARK Global/Finland」をご講演いただきました。また、日本でのスタートアップについて、東海大学長谷川光泉先生に「医工連携のスタートアップ」、窪田製薬の窪田良先生に「医師の米国起業、ベンチャー企業の世界的価値」をご講演いただきました。スタートアップのエコシステムについては、CIC梅澤高明様に「CICがつくるイノベーションコミュニティー」、慶応義塾大学眼科の坪田一男先生に「慶應義塾大学におけるエコシステム醸成」をご講演頂きました。そのほかにもたくさんの方々に、ご講演いただき、最後に行われたパネルディスカッションでは、非常に意義の高いテーマである日本におけるスタートアップエコシステムのありかたについて重要なディスカッションがなされ、興味深い内容でした!
また、Research Studio並びに、慶応/筑波大学の別のアントレプレナープログラムの最優秀チームから、ピッチ発表がありました。いずれも、議論に議論を重ねたプロジェクトであり、聴衆も興味津々で数多く質問の手が挙がりました。懇親会でも様々な分野で活躍されている参加者同士、ネットワーキングが行われました。
パネルディスカッションでのディスカッションは、本邦におけるイノベーションエコシステムにとって有益な内容であり、何らかの形で共有を検討しております。
来年度以降も、Research Studioは進化していきます!!
受講者アンケートでも概ね好評を得ているが、ビジネス面での各チームごとに必要な支援が異なるため、支援体制の拡充を予定しています。その他にも、国内及び海外連携拠点との連携のあり方、BootCampの開催形式、開催時期や講義内容、受講生の公募方法、チーム間でのディスカッションが進みやすいグループワークのやり方など、よりよい内容に作り替えて参りたいと思います。
引き続きの受講・ご支援 どうぞよろしくお願い致します。
UCSD海外メンタリングプログラム ‘Entrepreneur Training Program’
2020年2月10日~14日の5日間、Research Studio 2019で最優秀賞のTeam Qolo 及び Global Entrepreneurship賞のTeam DressUp の2チームが、海外展開を含めたグローバルな視点でのシーズの展開をさらに具体化するべく、Research Studio 2019で組み立てた開発計画およびビジネス展開を持参して、米国サンディエゴのUCSD IGEの海外アントレプレナートレーニングへ参加しました。
プログラムの1~2日目は、米国のシリアルアントレプレナーであるメンター達からの、熱の入った講義を受講しました。自身の経験に基づいた米国マーケティング、インタビュースキル等の本体プログラムでは得難い貴重な情報が得られました。それぞれのプロジェクトを加速させる内容となっておりました。
2~4日目のField Workは、訪米前に現地専任メンターと事前に調整し、各チームのフェーズに合った、米国のKey Opinion LeaderやCRC、Patient Journeyを知る医療者、大手企業、ベンチャー企業などとのミーティングの予定を設定しました。各チームは内容が豊富で消化するのが大変そうでしたが、今後のプログレスへと変換し、最終日に成果報告をピッチしました。現地のVCも最終ピッチに参加され、VCの視点からコメントをもらいました。
プログラム前に、現地選任メンターと事前メンタリングを行うことで、米国展開に関して具体的なディスカッションが行えました。
Research Studio2019を終えて ~運営から見えるスタートアップ支援~
プログラム前半の「Target Product Profile」の間は方向性について悩んでいるチームも多いが、中間ピッチをへて、 後半の「ビジネスモデル・ビジネスプラン」に進んだ頃に、飛躍的に事業計画が進歩するチームが多いことを経験します。事務局の準備するテンプレートに沿って、繰り返し課題を検討するResearch Studioのシステムは、継続することで飛躍的な効果をもたらす可能性を秘めています。
Research Studio参加チームは、次のマイルストーンへ向けて、以降の事業プランを前に進めていきます。各チームへの参加後のフォローアップも行っていく予定となっています。