サーチスタジオ

開催報告

医療分野特化型アクセラレーションプログラム「 Research Studio 2020 powered by SPARK 」開催報告

概要

2018年に筑波大学で始動し、2019年より全国5大学の連携拠点に展開している国内初の医療分野特化型アクセラレーションプログラム”Research Studio powered by SPARK” は、2020年よりさらに運営規模を拡大し、 西日本拠点として大阪大学でもパラレルな開催が始まりました 。また、コロナ禍をきっかけに、始動当初より導入していた TV 会議システムを本格化し、これまでの開催で蓄えた多数の学習コンテンツを使ったe learningによる事前学習を最大限活用しました。
本プログラムの特徴の1 つである 海外拠点(Stanford大学SPARKプログラム、UCSD Institute for Global Entrepreneur(UCSD IGE))との連携をさらに強化し、早期より海外を視野に入れられるようUCSD MedTech Acceleratorプログラムの視聴も可能としました。国内のみならず国際的視点を踏まえたカリキュラムとなっています。応募者はまずBoot CampでValue Proposition及びMarket Sizingについて学び、シーズの概要を簡潔に1枚にまとめるトレーニングを行いました。
選抜5チームには計10回のメンタリング・グループワークを行いました。臨床開発からビジネスモデルに至るまで幅広い分野について、経験豊かなメンター陣からメンタリングを受け、活発な議論をおこなうことができました。各チームには臨床現場をよく知る臨床医がチューターとして担当し、一丸となってチームをサポートしました。海外メンターを招聘し、国内市場だけではなく米国市場参入を現実的に考えた際に必要とされるGo to Market Strategyについてブラッシュアップすることができました。
本プログラムはAMED「橋渡し研究戦略的推進プログラム 拠点間ネットワーク 人材育成事業」の支援を受け実施致しました。

スケジュール

TPPに関するメンタリング、特別レクチャー(メンタリング)、ビジネスに関するメンタリングを経験し、事業計画をブラッシュアップする日程になっています。

受講生の対象

① 国内の大学院生・アカデミア研究者・アカデミアと共同研究を実施する 企業研究者・教員等で医療シーズを持ち開発意欲のある方(特に起業 を検討中あるいは、起業間もない方が望ましい)
② ビジネス経験を持ち、①の研究者のシーズをもとに起業することを 検討中の方(ただし、大学の産学連携担当者もしくは大学発ベンチャー 支援に実績のある方の推薦が必要)
③ 起業に興味があり、アカデミアに所属している医療、または臨床開発の 経験のある方

Boot Camp(講義ワークショップ)

6月20、21日の2日間、新型コロナウイルス感染防止のため、Zoomを用いた完全オンラインで開催しました。医薬品から医療機器に至るまで様々なシーズを保有する9名を含む30数名の受講生にご参加いただきました。受講生は、事前にe learningを活用しつつ、当日はディスカッションやグループワークを中心にすすめることで、リモートで限られた時間を有効活用しました。
Day1はValue Proposition(技術の棚卸し)に関するグループワークについてメンターやチューターとディスカッションしました。参加者には、学会発表でのいわゆる「プレゼン」と、事業化を進めるために重要な「ピッチ」の違いを肌で感じてもらい、Value Propositionを学ぶ機会を得ることができました。 Day2 は、前日に検討した Value Propositionに対応するCustomer Segmentを対象としたMarket Sizingについて学びました。最後に、2日間でブラッシュアップした内容について各チームに発表いただきました。
参加者たちは、事業化の基礎となるValue Proposition と Market Sizingについてブラッシュアップでき、有益な時間を体験することができました。

選抜プログラム

■チームの選抜
優れたチームが多く選考は困難でした。選考基準は必ずしも優劣だけではなく、今後の伸びしろやプログラムへのフィットという観点も踏まえて選考しました。選考委員会による審議の結果、以下5チームを選抜しました。また、マッチングを希望するチームにはビジネス 臨床開発専門家として応募いただいた参加者を各チームにマッチングしました。

■選抜チームプログラム

■メンタリング・グループワーク(前半:Target Product Profile)
9月2日~23日にかけて製品開発を中心としたメンタリング・グループワークがオンラインで開催されました。選抜5チームには、基本的にT CReDO所属の臨床医が1人ずつそれぞれチューターとして担当となり、プログラム進行のサポートをしました。前半4回は研究成果と対象とするアンメットメディカルニーズを詳細に検討しシーズのValue Propositionを定め、Target Product Profileを策定する製品開発をテーマとしました。
Day1は「 Current Therapeutics Competitive Landscape」をテーマにCustomer JourneyとPositioningにフォーカスして検討しました。 Day2は「臨床試験のデザインと非臨床データパッケージ」をテーマに臨床POC取得までの道筋をディスカッションし、Day3は「Market Analysis」をテーマに最初にアプローチする市場Market Sizingを行った上でのR&D費用の妥当性を検討しました。前半最後のDay4は「Development Roadmap (milestone design)」をテーマにDay1 3の内容を踏まえて、 Problem, Solution, Technology, Market, Roadmapの形で暫定的な製品開発の方向性を定めてもらいました。
参加者は、各回事前にResearch Studioオリジナルのテンプレート及びe learning学習素材をつかった準備を行い、当日はZoomメインルームでピッチ発表した後、ブレイクアウトルームを使ったグループワーク・メンタリングを行いました。経験豊富な学内・学外メンター陣からの気づきを与えるコメントを多数いただき、様々な角度からの分析を行い、ピボ ット・方針転換もしながら議論が継続されました。

■Mid term Pitch Event
9月30日に、つくば市共催にてMid term Pitch Event(言語:英語)を開催いたしました。つくば市役所コミュニティ棟でのオンサイトとZoomオンラインのハイブリッド形式で行いました。
国内メンターとして、アカデミアや各分野から経験豊かなエキスパートを、また海外ゲストにはUCSDよりDennis Abremski氏、John York氏をお迎えし、各チーム筑波大5チーム、大阪大2チームのピッチセッションにコメントいただきました。
各チームはTPPを中心に、プログラム前半の成果を英語で5分間の発表(10分間の質疑応答)をしました。事業化ピッチに不慣れな様子も見受けられ、この時点ではまだ製品開発の方向性が不鮮明なチームもありましたが、プログラム中盤~後半へのブラッシュアップに向けたよい課題出しに繋がりました。

■特別メンタリング、メンタリング・グループワーク(後半:Business Model)
10月7日~28日にかけてチームごとに特別メンタリングを行いましました。チームごとに抱えている課題は異なる「知財」、「保険償還」、「医療機器のプライシング」、「ピッチテクニック」をテーマにメンターにそれぞれメンタリングいただきました。グループワーク前半に出遅れていたチームは、プログラム外でもミーティングやメール・ SNSによる連絡を取り合い、プランのブラッシュアップを頑張っておりました。
11月11日~25日のメンタリング・グループワーク後半は、ビジネスモデル構築を中心としたテーマで実施されました。Day8は「最終TPP」をテーマにこれまでの検討をふまえた最終的なTPPにおけるビジネスモデル競合分析を行い、Day9は「Cashflow Management / Milestone」をテーマに開発ロードマップに基づいた資金調達戦略を検討しました。最終日であるDay10は「 Go to Market Strategy / Deal Structure 」をテーマに海外市場を視野に入れたGo to Market Strategyを検討しました。
プログラム前半では様々なメンターからの様々なコメントを消化し整理しきれていなかったチームも、ビジネス面での検討を深めることでプログラム後半になると急激な成長が見受けられました。プログラム外でもZoom ミーティングを繰り返し行うなどチームごとに準備を進め、T CReDOが開催する様々なイベント・講演会にも積極的に参加し、チューターもチームと一丸となって最後まで尽力しました。

■Final Pitch Event
12月9日につくば市との共催でオンライン開催されたFinal Pitch Event(言語:英語)では、Problem, Solution, Technology, Business s Model, Competitive Landscape, Development Roadmap, Team, Executive Summaryというスタイルで、各チームがピッチをしました。どのピッチも参加者が日常業務で忙しい中でも、
本プログラムに意欲的に取り組んだ成果を感じることができるものでした。概ね中間ピッチと比べて、より聴衆を引き付けるピッチのストーリー構成があり、またより計画自体も練られた発表がなされました。
発表後に開催された選考委員会では、本年度も各チームの差は僅差であり、開発ステージやプランの完成度を優先すべきか、UCSDプログラムでの効果が得られるチームを重要視すべきか、今後の伸びしろを重視すべきかなど各メンターで意見の相違もありました。

■最優秀チーム(Grand Prize)
審査委員会による選考の結果、本年度のGrand Prizeは、産業総合研究所発シーズによるスタートアップの起業検討チームである「 Neurit(ニューリット)」(メンバー:長谷川 良平、竹原 繭子、山本 泰豊)が受賞しました。受賞おめでとうございます!

■各賞受賞チーム
Global Entrepreneurship Awardは、筑波大学泌尿器科の池田先生を代表としたチームである「VesicA Intelligence」(メンバー:池田篤史、野里博和、河内佑太)が受賞しました。

また、Sparking Innovation Award は、大阪 R esearch Studioからのチームである「miruion」(メンバー:小竹和樹、新間秀一)が受賞しました。

受賞3チームには2021 年2月開催のUCSD BootCampに参加していただきます!

■参加者の感想
・非常に密度が濃く、またメンターの先生方が充実していることに感銘いたしました。特にメンターの先生方は多様なバックグラウンドを擁しておられ、多面的なコメントがいただけて大変参考になりました。
・参加したことで、これまで行ってきた自分たちの研究が整理され、開発の段階をひとつ先へ進めることができた気がする。
・製薬企業からのメンターとベンチャーのバックグラウンドのメンターでは、対極的なご意見を出される場合が多かった。
・リサーチスタジオのおかげで事業の軸が決まり今後の戦略を練ることが出来た。自分たちだけでは絶対にできなかったので非常に助かりました。
来年度以降も、Research Studio はさらに進化していきます!!
本年はオンライン開催に大きく舵をきったことで、参加者が参加しやすくなった半面、ディスカッションが発散しやすい点や参加者間、参加者とメンター間の雑談コミュニケーションが とりづらく なった点が課題と感じた。また、かなり幅広い内容であり受講によって飛躍的に開発が進むチャンスが得られる反面、受講者への負担も大きいのが現実である。今後もプログラム運営のありかたについて内容に作り替えて参りたいと思います。医療 シーズを開発したい方々の受講お待ちしております!

International Symposium Online Life Science Startup Ecosystem DIGITAL

Final Pitch Eventの翌日である12月10日に、Research Studioの締めくくりとして、CIC Tokyoでのオンサイトおよびオンラインのハイブリット開催方式で国際シンポジウムを開催しました。参加者はオンサイトとオンラインを合わせて、200人前後が視聴するなか、大学、スタートアップ、行政、アクセラレーター、投資家等、非常に多様な講演者が登壇しました。
プログラム前半は英語で行われ、Research StudioやUCSDの取り組みの紹介、スタートアップピッチとして「Epigno」によるピッチ、Research Studio2020の受賞2チーム「Neurit」、「VesicA Intelligence」によるピッチやアクセラレーターによるパネルデスカッションが行われました。また、省庁や東京都からのエコシステム構築に関わる発表、デジタル・ AI技術の医療への応用についての発表、そしてエコシステム構築の議論が行われました。“ Round table discussion of startup accelerators ”のセッションでは、スタートアップのエコシステムを構築するにあたり、日本各地で開催されているアクセラレーションプログラムやインキュベーターの紹介がありました。そのほか、日本での資金調達の難しさや、魅力的なスタートアップを輩出していくための方法など、それぞれのプログラムの代表者から意見交換がなされました。
シンポジウム後半では、”デジタル時代の医療開発と、スタートアップ拠点都市”のセッションで、厚生労働省中井清人様から「医療機器・医薬品の承認に関する最近の動向」、内閣府 石井芳明様から「スタートアップ支援の様々な制度」、東京都 米津雅史様から「スタートアップエコシステム東京コンソーシアム」についてご説明があり、産学官民の連携の重要性について再認識することができました。その後のセッションでは京都大学奥野恭史様からはAIを活用した創薬の未来」が、NTT Research Inc. 小澤英昭様からは、「 AIだけでは済まない医療情報処理」、そして、慶應義塾大学医学部 陣崎雅弘様からは「AIホスピタル」として日本の医療系AIシステム利用の遅れと早急なデジタル化の必要性について、筑波大学 鶴嶋英夫先生からは筑波大学での取り組みについて説明いただきました。シンポジウム最後の”スタートアップ・アクセラレータ座談会Tech push vs. Needs driven ”では、Stanford大学池野文昭先生、レクメド松本正先生、シドニーMicheal Wallach、台湾Jane TsengといったSPARKのローカルディレクター、CIC Tokyo梅澤高明様も参加し、次世代のスタートアップへのサポートや環境についてディスカッションが展開されました。